10年後、大工はどうなる?
弊社の地元である名古屋市南区は戦火に焼かれず、未だ2mくらいの道幅の道路が迷路のように入り組んだ町が残っています。
ですが、空き家問題もあるのでしょうか、解体され、空いた土地に建売分譲住宅があっという間に建つことが増えてきたような気がします。
弊社では、大昔はやっていたそうですが、現在は分譲住宅としての展開しておりません。
建売住宅はどうしても利益追求とい形に追われてしまいますので、下請けとなる、各業者さんはとんでもない値段で工事を進めるそうです(弊社下請けさんのお話)。
そうすると、自然と「終わらせること」に集中するようになります。「工期がすべて」だと、走って仕事するしかありませんので、少々の問題は気にしません。クレームが検査時に発見されなければそのままスルーです。
新築住宅は雨漏り、構造の部分では10年保証されますが、その他の部分は基本的に販売者や、建築業者の裁量によるので、時には消費者の方が泣き寝入りしなければならないことだってあり得る話なのです。
建売住宅が悪いよっていう批判をしたいのではなく、1人の職人として、技術を持った人間が、仕事だけを持ってきて丸投げするような人が丸儲けして、末端の職人ほど首が締まっていくという世の中の仕組みが悲しいと思うのです。
HMなどによる価格競争激化の時代が長かったがために、一番苦しかったのは仕事もらう代わりに安い日当でこき使われ、あげく責任まで押し付けられる「職人」、次に直接職人や工事店に頼むより結果的に同じ工事なのにより高価は工事代金を支払う「お施主様」、1番苦しくないのが「元請業者」。
そんな世の中が続いたため、今どきの子供は「大工」になりたいと思うようならないのです。
建築系の作業者はただでさえ、3Kっぽいイメージの強い職種ですが、さらにプラス1Kで「稼げない」が入ろうもんなら、わざわざ長い修業時代を経て「大工」になりたいと思うこと自体が物珍しい目で見られることでしょう。
少し前置きが長くなりましたが、現在の大工の人口というのがどのような年齢層分布になっているかご存知ですか?
これは、総務省の国勢調査データを年齢別にグラフ化したものですが、2010年では、総数が約40万人ですので、1985年から約半減したというデータが出ています。
本当に恐ろしいのはこの30年くらいの間に半減してしまったことではなく、この先10年くらいの間にどのようにあ推移していくかを誰も危険視していないことです。
2005年時のデータで着目すると緑色の帯から下が「10代から39歳」までの現役世代で、若い10代から39歳までの大工が約15万人くらいで全体の3割弱くらいの割合です。
それに対し、紫色の帯から上の部分は2020年には60歳以上となっている世代です。体が資本の職種ですから、60歳を超えてから大きな現場はおそらく入れてもらえないことが普通ですし、後世を育てる余力も残っているかわからないでしょう。
よって結論として、この先急激に大工の人口は減少します。さらに裏付けるならば、新規に入職する若年層も年々減少しています。
若い子にとって、大工職という職業はもはや社会的なステータスとしての魅力も感じられていないのかと、悲壮感さえ抱きます。
ですが、住宅市場としては、スクラップ&ビルドというよりは、今ある住宅を生かして廃棄物やCO2の排出を抑えるストック型住宅市場の形成に向かっているので、中古住宅をリフォームするような仕事が増えることから、より、住宅の構造に熟知した大工という職は、これから需要が増してくるのではないかと考えています。
お施主様目線で考えると、リフォームなどを相談する窓口はたくさんあるんです。家電量販店ですら、窓口がある時代ですから。ですが、大工に限らずですが、肝心の「職人」がいなくては、希望の工期にできずに待ちの時間が長くなったり、工賃の高騰で、結果的により工事費は増加していくのではないかと思います。
悪いことに歴史の繰り返しで、価格競争が激化し、そのしわ寄せが職人サイドに来るようなら、今度は工事の「品質」に影響が出てしまうことを忘れるべきではないと思います。
「安かろう悪かろう」で1番損をするのは、お施主様ですので、弊社では、技術の安売りはいたしかねます。
あくまで自社の責任のもとで自社で施工し、自社で若い技術者を育成し、この先も建築に関して良い技術を提供し続けていきたいと考えています。
この先10年後も20年後も「良い技術を適正なお値段で」お届けしたい、という願いのもと、若い技術者を育成できる環境を保つためにも、弊社のスタンスをご理解いただければと思います。